情シスアウトソーシングのメリットとデメリット:中小企業の視点で解説

情報システム部門の重要性

急速なデジタル化と情報システム部門

2020年頃の新型コロナウイルス感染症を契機に、日本ではテレワークをはじめとしたデジタル化が急激に加速したと言われています。

業務PCや周辺機器の調達、Web会議やチャットツールの利用、社外からでも社内システムにアクセスできるネットワーク構築、に代表されるような、新しいツールの導入やルール策定を検討された企業は多いのではないでしょうか。

そのような状況において、情報システム部門(以下「情シス」)の必要性や重要性を痛感した企業も少なくないはずです。

情シス部門の欠如がもたらすデジタル化への障害

情シスは企業のITインフラを支える重要な部門であり、テレワーク、企業のDX化、デジタル化の促進・運用には欠かせない存在です。

しかし、そもそも情シス部門を置いていないことで、デジタル化を断念した企業も多いのではないでしょうか。

また、テレワークが進む中で情シスがヘルプデスクのような業務に追われて本来の課題に向き合う時間が足りないと嘆く企業も多いのではないでしょうか。

実際に各所の実態調査データによると、IT人材の不足を嘆く中小企業の声が多くみられます。

進む情シスの外部委託とその実態

一方で、IT人材を確保できていない(またはIT人材育成中)の中小企業においては、情シス業務の全てまたは一部を「外部委託」に頼っているともいいます。

そこで今回は、まだ情シスを外部委託したことがない方々に向けて、アウトソーシングするべきなのか否か、解説していきます。

情シスアウトソーシングのメリットとデメリットを理解し、自社にとって最適な選択を見つけるために活用いただければ幸いです。

情シスアウトソーシングのメリット

まずは、情シスをアウトソーシングすることによるメリットをみていきましょう。

実際に以下のような恩恵を受けられると感じた場合は、情シスの外部委託検討をおすすめします。

IT人材の一時的な確保

中小企業にとって、優秀なIT人材を確保することは非常に難しい課題です。

実際に2024年版の中小企業白書において、中小企業の最も優先度が高い経営課題に「人材の確保(46.6%)」がランクインしている状態です。

さらに、足りない人材の中でもITやDXに明るい人材となると、採用難易度が高くなる傾向です。

そこで、情シスアウトソーシングを利用することによって、不足しがちなIT人材を一時的に解決することが可能です。

専門知識を持ったプロフェッショナルに業務を委託することで、最新の技術やノウハウを活用しましょう。

例えば、クラウドサービスの導入やセキュリティ対策など、専門的な知識が必要な業務も安心して任せることができます。

人件費やコスト削減

活用の仕方にもよりますが、情シスアウトソーシングを利用することで人件費や運用コストを削減することができます。

ご存知の通り、自社でIT人材の採用と育成・IT部門の体制構築・導入したシステムの運用…と進めていくには多くのリソースと時間が必要です。

しかし、情シスアウトソーシングを利用すれば、必要なサービスを必要な時にだけ利用することができ、コストの最適化が図れます。

例えば、PCのキッティングやヘルプデスクの対応など、定型的な運用/保守作業を外部に委託することで、コストを削減しつつ、効率的な運用が可能となります。

本来の業務に集中できる

中小企業にとって、限られたリソースを最大限に活用することが重要です。

「本来行うべき業務」と「情シス業務」を兼任している、という企業様は少なくないように思います。

導入している社内システム等が実業務の隙間時間で運用できるのであれば見直す必要はないかもしれませんが、運用コストがかかるシステムを運用している場合は、システムに何か問題が発生したときに兼任者に大きく負担がかかることもあります。

しかし、情シスアウトソーシングを利用することで、情シス業務にかかる負担を軽減し、本来の業務に集中することができます。

例えば、兼任情シスの方の業務整理を行い、簡単な定型作業や時間がかかる情シス業務を外部委託してもよいでしょう。

兼任者が本来のコア業務にリソースを集中させることで、事業の成長を促進することができます。

専門知識の活用

情シスアウトソーシングを利用することで、最新の専門知識を持ったプロフェッショナルのサポートを受けることができます。

過去の調査によれば、アウトソーシングを通じて得られる専門知識の活用は主に3つの効果が得られます。

  1. 中小企業の生産性向上
  2. 中小企業の競争力を強化
  3. 情報セキュリティ対策

特に、3番の情報セキュリティ対策においては「うちの企業の場合は何から始めてよいか分からない」といった声が多いようですので、専門家によるサポートの効果が大きいと言えます。

情シスアウトソーシングのデメリット

続いて、情シスをアウトソーシングすることによるデメリットをみていきましょう。

社内にノウハウが蓄積しにくい

専門家の力を借りることによるメリットがある一方で、任せっきりにし過ぎると社内にITに関するノウハウが蓄積しにくくなるというデメリットが発生します。

例えば、IT人材が不足している課題を持つ企業が、新しい社内システムをアウトソーシングを利用して導入したとします。

導入後の運用も「システムに詳しい人がいないから」という理由で外部に委託した場合、どのようなことが起きるでしょうか。

このような場合、IT業務を外部に委託することで社内の担当者が経験を積む機会が減少し、アウトソーシングありきの体制が継続していくことになります。

結果として、新システム導入により何かしらのメリットを享受したものの、IT人材の不足という課題を先送りにしたことになってしまいます。

今回の場合は、自社から何名かを選任し導入したシステムの担当に任命して、導入から運用まで外部委託の専門家から学ぶ機会を設けることで先の課題を解決できたかもしれません。

費用対効果が測りづらい

情シスアウトソーシングの費用対効果を正確に測ることは難しい場合があります。

短期的にはコスト削減が図れるかもしれませんが、長期的には外部業者への依存度が高まり、結果的にコストが増加する可能性があります。

そのため、アウトソーシングの契約前に、導入の目的とその費用対効果を慎重に検討することが重要です。

例えば、IT人材の採用コストや教育費用の削減、IT人材不足による長時間労働の改善、などを目的とすることを事前に決めておくとよいでしょう。

情シス業務の整理が必要

情シスアウトソーシングを利用する際には、事前に業務の整理が必要です。

つまり、どの情シス業務を外部に委託し、どの情シス業務を社内で対応するかを明確にする必要があります。

そもそも外部委託したいほど手一杯な状態であるにも関わらず、業務整理というタスクが追加されてしまうのです。

「何を外部委託してよいか分からない!」というお悩みを抱えていらっしゃる企業様は、情シスのコンサルティングを対応してもらえるサービスを持つ業者を探してみるのもよいかもしれません。

もしくは、一番ボリュームゾーンになっている情シス業務から外部委託し、空いた時間で業務整理を行ってみることも有効かもしれません。

「情シス アウトソーシング 比較」のように検索いただければ比較サイトが多数存在しますので、ぜひ調査してみてください。

もしくは当社のような企業にお気軽にご相談ください。何かしらご提案できることがあるかもしれません。

自分たちで管理できない体制になってしまう

情シスアウトソーシングの依存率が高まると、自分たちで情シス業務や社内システムを管理することが難しくなる場合があります。

例えば、社内システムの運用保守をアウトソーシングしているケースでは、緊急のシステム設定変更やトラブル対応など、迅速な対応が求められる場合に外部業者の対応が遅れることがあります。

あるいは、自社のシステム環境を把握している人間がアウトソーシング業者のみ、というケースに陥ることも少なくありません。

さらに、自社の担当者が異動などを理由に入れ替わった際に導入当初の設計思想を引き継ぐ人がおらず、業務が形骸化していきIT資産を有効に活用できなくなっていくというケースにもなりかねません。

自社の大事な情報資産やシステムを安定的に活用していくために、あくまでも管理主体は自社にあるとして、依頼している作業の内容を社内に残してチェックすることを忘れてはなりません。

情シスアウトソーシングに頼り切らないことも重要

前項までで情シスアウトソーシングのメリット・デメリットについてご理解いただけたでしょうか。

ここからは弊社が考える「情シスアウトソーシングの利用方法と考え方」について記載します。

ポイントは「使い分け」にあると考えています。

システムの導入・構築に関しては専門家に依頼

例えば、自宅を購入(or賃貸)したいとします。

不動産屋に行ってスタッフにあれこれ聞きながら場所と内装を選定します。

実際の家を建てるのは建築業の方(専門家)ですが、住んだあとのレイアウト変更や手入れに関しては、ご自身または専門業者の手を借りる(アウトソーシングする)こともあるでしょう。

同じように、何かしら社内にシステムを導入したい場合を考えてみます。

インターネットでの調査、もしくはIT業者(専門家)の情報から導入したいサービスを選定します。

実際の導入はIT業者(専門家)ですが、導入後の運用は情シス部門または専門業者の手を借りる(アウトソーシングする)こともあるでしょう。

アクション家の場合システムの場合
選定自分(専門家の手も借りつつ)自分(専門家の手も借りつつ)
実際の構築建築家(専門家)IT業者(もしくは情シス部門)
運用自分 or 専門家自分 or 専門家

上記ように、無意識にご自身で対応する部分と専門家の手を借りる部分を「使い分け」していることに気づくはずです。

「使い分けた理由」としては、特に導入や構築部分に関しては「専門家に任せたほうが信頼性と安全性が担保される」と考えたからではないでしょうか?

ということで、以下は一例ですがこのような場合は専門業者に依頼することをおすすめします。

  • メールシステムを移行したい
  • 新しく社内統一のグループウェアに刷新したい
  • クラウドサービスを導入したい
  • 今まで利用しているサービスやシステムを1つにまとめたい

また、導入相談の際に、実際の運用サポートや使い方のレクチャーを実施してくれるのか、を確認したほうがよいです。

その理由については次の章で説明します。

運用はなるべく自分たちで、時には専門家を頼る

自分たちでシステム運用を頑張ってみることも重要です。

しかし、あくまでも「なるべく」でいいと考えています。

今まで利用したことがないシステムについては、社内の全員がビギナーです。

システム導入の際に使い方のレクチャーやガイドがあれば、基本的な操作を間違うことはないでしょう。

あるいは、設定を変更したい場合は、導入したシステムの公式ベンダーがインターネット上に手順の記事を提供されているケースが多いので、参照してみて自分たちでやってみる→動作を検証してみる→手順を自社にフィットした形で作成してみる。ということでもよいでしょう。

こうした日常的な基本的なIT運用業務は社内で対応することで、ノウハウの蓄積が図れます。

ある程度社内にノウハウが残り、誰でも操作できるようになったことに関しては、アウトソーシングを検討してもよいかもしれません。

一方で、業務に直結するようなシステムの場合は、専門業者によるサポートを受けることで、必要な時に適切なアドバイスや支援を受けることができます。

例えば、システム監視やシステムのアップデート、セキュリティ対策など、専門的な知識が必要な場合には、専門業者のサポートを受けることで、安心して運用を行うことができます。

また、システム運用に関して、運用計画や大事なポイントを立案してもらい、自分たちで運用してみてもよいでしょう。

最後に

このように、情シスアウトソーシングには多くのメリットとデメリットがあります。

中小企業にとって、最適なIT運用体制を構築するためには、アウトソーシングの活用と自社での運用の「使い分け」をすることが重要です。

自社に最適なIT運用体制を検討してみてください。

本記事が参考になれば幸いです。


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